対物賠償は無制限がおすすめな理由とは
自動車保険の基本補償の1つ「対物賠償保険」は、基本的に無制限で設定されます。
もちろん、上限額を減額して、5,000万円や3,000万円という制限を付けることも可能ですし、その方が保険料を抑えられるでしょう。
しかし、多くの人が無制限で設定している対物賠償保険を、敢えて保険料を抑えるために減額するのであれば、そのために被るリスクを理解しておかなければいけません。
対物賠償保険とは
対物賠償保険とは、その名の通り「物」に対する保険です。
もしあなたが事故を起こしてしまったときに下記のものを保証してくれます。
- 電柱、ガードレール、信号機など
- 家や倉庫などの建物
- 相手の車
- 相手の車に積んであったもの
単独事故でガードレールに突っ込んでガードレールが破損してしまった場合は10万~100万くらいになるそうです。
信号機や電柱は被害の程度にもよりますが、1000万以下というケースが多いです。
相手の車の場合も、よほどの高級車では無ければ1000万以下でしょう。
それなら、無制限にしなくてもいいじゃないか!?
と思いますよね。
しかし、多くの人が無制限に設定しています。
対物賠償保険はなぜ無制限で入っている人が多いのか?
対人賠償保険については、数億円もの請求がザラにあるため「無制限」にするのが基本であり、それ以外は選べない保険会社もあります。
しかし、対物賠償保険については、一般的には「無制限」以外の選択肢があります。
まずはその選択肢について確認しておきましょう。
対物賠償の補償金額設定はいくらがあるの?
対物賠償保険の上限金額については、無制限の他に「5,000万円」「3,000万円」「1,000万円」「500万円」あたりに設定できる保険会社が多いです。
保険加入者の75%~93%程度の人が無制限を設定しています。(調査会社によってばらつきがあります)
無制限以外を設定している人たちの6割が1,000万円程度の低めの設定にしています。
つまり、保険料節約のために対物損害保険を減額しているということでしょう。
補償金額が違うとどのくらい保険料が変わるのか?
対物損害保険の上限額を減額した場合の保険料の減額幅が、もし著しく大きいのであれば、自動車保険の保険料を節約するのに有効な方法かもしれません。
しかし、対物賠償保険の上限を1,000万円の場合と無制限の場合での保険料の差額は、年間で1,000円程度しかないのです。
つまり、保険金の上限額を無制限にすることが、保険料を1,000円上乗せする価値もないと考えれば、節約した方が良いわけです。
対物賠償の高額事例を紹介
上記のように、対物賠償保険については、減額の選択肢があるのが一般的です。もちろん、保険料の減額幅である1,000円程度をどう考えるかです。
しかし、少しでも保険料を抑えたい人にとっては、検討の余地があるのかもしれません。
その検討をするために、最悪の場合どれほどの負担を負ってしまうのかを知っておくことが大事でしょう。
高額事例を幾つか紹介
傷害事故や死亡事故であれば、高額な賠償金が発生することは容易に想像できるでしょう。
しかし、物理的な被害者がいない物損だけの事故で、どれほど高額な賠償金が発生するかはなかなか想像できないかもしれません。
過去にあった高額損害賠償の事例には、以下のようなものがあります。
認定総損害額 | 被害物件 | 判決年月 |
---|---|---|
2億6,153万円 | 積荷(呉服・洋服・毛皮) | 1994年7月19日 |
1億3,580万円 | 店舗(パチンコ店) | 1996年7月17日 |
1億2,037万円 | 踏切で電車と衝突、家屋損壊 | 1980年7月18日 |
1億1,798万円 | 積荷(おむつ製造機) | 2011年12月7日 |
1億1,347万円 | 踏切で電車と衝突 | 1998年10月26日 |
高額な損害額のものを集めただけだと考えるかもしれません。
しかし、上記のように事故を起こした車ではなく、積荷や店舗、電車などについての損害というのが非常に大きな損害賠償を生むため、これらが特別な例だと言い切れないのです。
また、自動車相手の事故の場合でも、損害額が高額になることは少なくありません。
例えば、乗用車との事故の場合、損害賠償額は、全損したとしてその車の時価相当額と代車代、買い換えの諸費用、営業車であれば休車損害と呼ばれる営業上の損害補償です。
これらを合計しても、一般的な車であれば1,000万円もあれば足りることが多いでしょう。
しかし、自動車事故の場合は相手が1台とは限りません。
もし衝突した相手が対向車線に飛び出して複数の車と衝突してしまった場合はどうなるでしょうか?
それらの車すべてについても、同様の霜害賠償が必要なのです。1,000万円や3,000万円などすぐに超えてしまうことは、容易に想像できるでしょう。
もし払えなかったらどうなる?
上記のように、対物賠償については非常に高額になる場合が少なくありません。
もし、賠償請求金額が対物賠償保険の上限金額を超えてしまった場合、加害者が自分で支払わなければならないので、多くの人にとっては大きな負担になってしまうでしょう。
もちろん、賠償金を支払えなければ、示談交渉が難航するのは必至です。
被害者側は裁判を起こすなどの対応をとるでしょうし、最悪の場合は財産を差し押さえることもあり得ます。
対物賠償保険に免責は付けられるの?
対物賠償保険にも、車両保険と同様に免責金額を付ける場合があります。
免責金額を付けると、対物賠償保険を使った場合でも、免責金額分については負担しなければならなくなります。
ただし、その分保険料を下げることができるのです。
どの保険会社で免責が付けられる?
実際に対物賠償保険に免責を付けることができる保険会社については、それほど多くありません。
以下の保険会社では付けることができることが明記されています。
- あいおいニッセイ同和損保
- JA共済
残念ながら、他の保険会社では見られませんでしたので、個人向けの自動車保険ではあまり一般的ではないようです。
免責を付けるのはおすすめしない
そもそも物損事故を起こすたびに対物賠償保険を使っていては、翌年の等級が一気に下がってしまい、保険料が跳ね上がります。
そのため、10万円程度の賠償額であれば自腹で対応するのが一般的でしょう。
そう考えれば、10万円の免責金額を付けて保険料を安くした方が得策かもしれません。
しかし、対物賠償保険に免責金額を設定するのは、あまりおすすめできません。
なぜなら、免責金額が設定されていることで、示談交渉が難航しやすくなるからです。
事故を起こしてその賠償額が明らかに免責金額以内だった場合、自分で支払う方がいいということになるでしょう。
その場合、少しでも金額を下げようとするのが人情です。
その無意識な思いが言葉尻に表れ、自分の保険の担当者はもちろん、相手方にも不信感が生まれて交渉が進まなくなってしまうのです。
また、対物賠償保険を使って保険会社が示談交渉をする場合でも、保険会社からと加害者からとで別々に支払うことになりますので、相手に不信感を与えるものになってしまいます。
免責がなければ、保険を使う場合と自腹で払う場合とで単純な比較をするだけですので、示談交渉自体に問題が生じることは少ないでしょう。
対物外傷保険に付けておきたい特約は?
対物賠償保険を無制限で付けておけば、どれだけ大きな事故を起こしても大丈夫かというと、そういうわけでもありません。
実は、無制限であっても対物賠償保険では補償しきれないものがあるのです。
無制限といっても全額払ってくれるわけではない
例えば、時価200万円相当の車にぶつけてしまったとしましょう。
過失割合が100%なら、対物賠償保険は時価相当額まで補償してくれますので、最大で200万円までは補償してくれることになります。
しかしこのとき、相手の修理代が250万円かかることもあります。
その場合、50万円は自腹で出す以外にありません。
足りない分は特約でカバー
上記のように、相手の自動車に対する補償は、対物賠償保険だけでは時価相当額までしか補償されません。
しかし、多くの保険会社では、時価相当額以上の請求があった場合に備える特約を用意しています。
その特約を付けていれば、もし上記のように時価200万円の車の賠償請求金額が250万円だった場合でも、すべて保険金でまかなうことができます。
おすすめの特約はどれ?
対物賠償保険で補償されない損害賠償請求に対応する特約としては、以下のような名称のものが用意されています。
- 対物全損特約
- 車両全損修理時特約
- 対物全損時修理差額費用特約
- 対物超過修理費用特約
基本的にはほぼ横並びの特約で、支払限度額は50万円までになっています。
過失割合が100%であればあまり効果がないかもしれませんが、そうでない場合は相応の効果が期待できるでしょう。
保険料額もそれほどかかるわけではありませんので、加入しておくことをおすすめします。
まとめ
対物賠償保険については、対人賠償保険とは違って、限度額を下げることが多くの保険会社で可能になっています。
しかし、過去の事故事例を見る限り、その選択はあまり得策とはいえません。
対物賠償保険についても、無制限で付けておく方が安心できるのです。
- 物損事故でも億単位の賠償金が発生することがあります
- 対物賠償保険は無制限にしておく方が良い
- 対物賠償保険に免責を付けることで保険料は抑えられるが、示談交渉が困難になる場合があるため免責を付けない方が無難
- 対物賠償保険では、相手の自動車の時価相当額までしか補償されない
- 特約を付けておくことで、時価相当額以上を補償することができる
保険は安心を買う商品ともいわれています。保険料を考えることは重要なことですが、安心感という部分も考慮して、保険を選びましょう。
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